千葉大学医学部が千葉県内の小学生を対象に実施した喘息発症率調査は、交通量の多い幹線道路が通る地域にある学校での喘息発症率が、田園地域の学校に比べ有意に高いことを示している。中でも市川市は田園部である館山市と較べ、3.62倍もの発症率であることが明らかにされている。子供たちをいつまでもこうした大気汚染の環境に置き続けるならば、子供たちの健康を守るべき立場にある我々大人の責任が問われることになる。
外環道路計画は市川市と松戸市を12キロにわたって縦断する。湾岸道路、京葉道路、北千葉道路という三つの高速道路との間に巨大なジャンクションが計画されているほか、4ヵ所ものインターチェンジが学校や住宅の間近に造られる計画である。住民の立ち退きが2,000戸を超え、接続道路などを含めると2,700戸という数字に達する。これは全国でも例を見ない規模であり、まさに「まち破壊の道路」と言わなければならない。
今、国や道路公団は都心の渋滞緩和を理由にこの外環計画の推進を図っているが、この道路計画はもともと、埋め立てなど千葉県の湾岸開発に伴い、湾岸と内陸部を結ぶ物流対策として計画された大幹線道路であり、道路建設の目的は都心の渋滞緩和とは無縁である。
市川市と松戸市の住民は実に34年にもわたる粘り強い反対運動によってこの道路計画を阻止し、クロマツの残る町並みや、緑多い里山を守ってきた。この道路計画にはすでに5,000億円が投じられているが、事業遂行にはなお1兆円もの事業費が必要とされている。「なお1兆円もの費用をかけて公害をもたらす道路を造る必要があるか」と考えれば、計画路線内の用地買収が進んだことは何らこの計画を正当化する理由にはならない。しかも国、公団が取得した用地には貴重な遺跡や豊富な地下水、1万年を超える自然堆積物が存在することも明らかになっている。「これらを生かし外環のないまちづくりを進めるべきだ」とする住民の主張を我々は断固支持するものである。
一方、第二湾岸道路は干潟保全を求める幅広い市民の運動で、埋め立て計画が白紙撤回された三番瀬に計画されている。埋め立てが中止になっても巨大な高速道路が建設されれば三番瀬の自然は大きく傷められ、三番瀬の生態系が重大な影響を受けるだけでなく、道路からの排気ガスによって湾岸地域の大気汚染が一層進むことは目に見えている。千葉県は第二湾岸道路建設に固執する理由として既存の湾岸道路の交通量増加、特に外環が接続した場合の交通量増加をあげている。しかし実際の湾岸道路の交通量は近年、減少傾向を示しており、外環道路さえ建設しなければ第二湾岸道路を建設する理由はなくなる。千葉県が第二湾岸道路を必要としている説明は、クルマの交通量を抑制することなく、際限なく道路を造り続けていくことの愚かさを示すだけである。
三番瀬はシギやチドリなど、水鳥の日本最大級の飛来地であり、冬場には10万羽を超えるスズガモが見られる。一方、三番瀬の干潟は13万人分の浄化能力を持ち、東京湾の浄化にも役立っているし、東京湾に生息する魚類の稚魚が育つ場所として東京湾の漁業にとってなくてはならない場所でもある。このような三番瀬を早期にラムサール条約に登録し、恒久的に保全するためにも我々は第二湾岸道路計画の撤回を強く求め、ここに決議する。
2004年10月10日
- 第30回道路公害反対運動全国交流集会