住環境や自然環境を壊す道路建設の強行や大気汚染などの道路公害の進行に反対し、その改善を求める全国の住民運動関係者は、第28回道路公害反対運動全国交流集会を、京都で開催し、以下の内容を確認した。
昨年から始まった特殊法人等改革の議論や、引き続く道路関係四公団民営化推進委員会での議論の中で、道路公共事業は、政・官・財が相互にもたれ合い、自らの権益の温存・拡大の場としていたことが国民の前に、より明らかとなった。また、閣議決定で実施に移される道路整備五カ年計画は、一度決まれば、財政上も、行政施策上も国民のチェックが全く効かず、専ら自己回転する仕組みもすでに明らかとなった。
この歯止めなき道路公共事業の推進は、今集会での各地からの報告でも明らかになったように、住民が長い歴史の中で育んできた文化や町並み、景観、人々のコミュニティを分断し、自然環境や動植物の生息環境、生態系を破壊してきた。また、大都市では、大気汚染を拡大させ、深刻な健康被害をもたらしている。
我々は、ムダな公共事業の象徴である道路建設の拡張政策は直ちに改革すべきと考える。それは、(1)ただ、財政の破綻に歯止めをかけるという意味だけでなく、(2)地球温暖化を進める温室効果ガスの削減を定めた京都議定書の議長国である日本政府の、世界に対する指導力と国民に対する責任を果すうえで、主要な排出源である自動車の削減をめざすためにも、(3)10月29日、自動車の排ガスと健康被害の因果関係を認め、国・東京都等への賠償を命じた東京大気汚染判決の結果を真摯に受け止めるためにも、(4)そしてなによりも、住民の多くが願っている快適でいつまでも住み続けられるまちを守り、創っていくために、自動車中心の交通政策から環境に優しい多様な公共交通を活かした交通政策に転換することが、21世紀のまちづくりに求められているからである。
このため、この12月に予定されている道路関係四公団民営化推進委員会での最終報告は、以上の内容を前提に検討されるべきであるし、大都市における自動車公害をより深刻化させる都市再生プロジェクトは速やかに中止し、道路公共事業の住民運動つぶしをねらう「改正」土地収用法のやみくもな強行も中止すべきである。
国民の93%は、道路建設などの公共事業は「無駄があり、減らすべき」(共同通信調査、2002年10月)と考えているし、道路建設にともなう財政議論が始まる前の世論調査(内閣府調査、2001年1月)でさえ、「これ以上高速道路を拡充させる必要はない」と答える人が47%にのぼり、「不必要」が「必要」を初めて上回るようになっている。まさに、政府がこれまで進めてきた自動車優先の道路拡張政策は、21世紀の国民のくらしとまちづくりに対立する愚策である。
よって、政府と自治体・道路公団は、以上の点を踏まえて、これまでの道路・まちづくり政策を転換するよう訴えるものである。
2002年11月10日
- 国土交通省、環境省、京都府、京都市、各自治体、道路四公団 あて
- 第28回道路公害反対運動全国交流集会