第1日目(11月12日)|現地見学・全体会
現地見学
環状2号線西南部→名四国道→環状2号線東南部→弥富相生山線(下車視察)→八事天白渓線→高田町線
全体会|県内団体の報告
労働会館東館2階ホール(参加54名)
(1)高田町線 都市計画廃止の決定|古田剛(高田町線を考える会)
70年前の1946年に都市計画決定。多くの反対で2007年には幅30mを18~20mに縮小した案を市に提案させたが、11年近くの運動で32回の集会と3回のタウンウオッチング、関係地域へのニュースの配布17回、会報53号、区政協力委員や市会議員への働きかけにより、2016年2月5日の都市計画審議会で、(1)29回の説明会で地元合意は得られなかった、(2)社会情勢の変化(交通量・人口の減少など)、(3)地震発生時の避難は可能、として、市は高田町線の1,870m廃止を決定。その廃止手続き中にも「市が先行取得した土地は、市民のために利活用せよ」の意見書を提出した。今後はどんな街づくりをしていくべきかをみんなで考えていくことにしている。また、市が先行取得している10か所の土地を民間に売却するのではなく、市民のために利用せよとの要請行動を行っている。
(2)八事天白渓線|栗山知久(八事天白渓線・東山公園整備計画を考える会)
約60年前の1957年に都市計画決定。2007年の道路整備プログラムで着手が2017年とされたが、(1)自然生態系を破壊する、(2)日赤病院北交差点での5差路で、しかも山手植田線とは鋭角に交差、(3)地域3町内会が反対、(4)交通量が減少している具体的調査結果、などから反対を続け、2016年9月16日には田口一登市議(共産)の市議会本会議質問で「市が6月に公表した未着手道路整備プログラム方針では、計画廃止など3分類し今年度中に策定するとしているが、問題が多く地元も反対している八事天白渓線は廃止路線になるのか」と釘をさし、市は明言しませんでしたが、「議会での議論や、地元住民の意見も勘案する」と答弁しました。そして、11月4日の住宅都市消防委員会で説明された、第2次道路整備プログラム案(パブリックコメント素案と思われる)では、山手植田線、八事天白渓線など25路線を廃止する方針が示されました。
12月からパブリックコメントで市民意見を募集するということなので、多くの廃止賛成意見を提出していきます。
- 名古屋市会田口一登議員の議案外質問「山手植田線」「八事天白渓線」の廃止を(2016年9月16日)
- 田口かずとのブログ:山手植田線・八事天白渓線の道路計画 ついに廃止へ(2016年11月4日)
- 名古屋市:「未着手都市計画道路の整備について(第2次整備プログラム)(案)」について(2016年12月12日)
→未着手都市計画道路の整備について(第2次整備プログラム)の策定
(3)相生山緑地の道路事業計画|近藤国夫(相生山の自然を守る会)
約60年前の1957年に都市計画決定。全体の8割は開通。大規模なヒメボタル生息地の相生山緑地の892mが未着工であった。1993年に事業認可され、2003年に建設工事が始まったが、2000年から“不要な道路で緑地を壊すな”と訴えてきた相生山の自然を守る会をはじめ、多くの市民が反対の声をあげ、行政や議会に働きかけた。そして2014年12月26日に河村市長は「道路事業は廃止する」「道路部分を含めて都市公園・緑地として都市計画決定する」と表明しました。
しかし、これを具体化するはずの行政内部の「世界の『AIOIYAMA』プロジェクト検討会議」はこれまで6回開催しているが、都市計画変更の時期がいつになるかも見通せない状況である。私たちは、まず弥富相生山線を廃止し、その後市民も含めて相生山緑地整備を進めるよう、陳情、要望してきた。現在は12月に「弥富相生山線の都市計画決定を速やかに取り消すことを求める署名」を進めている。
(4)名古屋環状2号線(東部・東南部)の工事による家屋被害|山原照生(東南部環状2号線問題懇談会)
名古屋東南部環状2号線問題懇談会は1999年6月に発足し、各種活動を進めてきた。今回は建設工事に伴う家屋被害に限定し、ここ数年の活動を報告する。
2013年1月~2月までに家屋被害に関し要請書・質問状等を7通(中部地方整備局、愛知国道事務所、中日本高速、名古屋国道事務所)、国土交通大臣宛て1通を提出し、文書回答を求めたが、文書回答は皆無であり、話し合いに応じただけである。その間の教訓は、(1)要請書等の事前説明をし、回答日を設定する。(2)相手方の回答、弁明の機会を多くさせる、(3)回答内容や不明点をその都度確認し、場合によっては次回に引き継ぐ、(4)相手方の職氏名も含めた記録作成が重要である。
調査資料請求等について
- (1)「公共事業に係る工事の施行に起因する地盤変動により生じた.建物等の損害等に係る事務処理要領(昭和61年4月1日建設省)」2条では、地盤変動による損害等を生ずる恐れがある場合は工事前・工事中に(1)地形地質、(2)過去の地盤変動の発生・原因、(3)地下水の状況、(4)他の工事の有無等、必要な調査を行うものとしている。この調査資料を求めたが、「調査は実施している」「被害当事者からの請求があれば提供する」「工事との因果関係を判断する場合に提供する」と回答が二転三転したため、公文書公開制度で開示を求めた結果、ほとんどの調査が行われていないことが判明した。
- (2)地盤変動(沈下)の原因と思われる地下水の汲上げ記録・地下水位測定記録を求めると、汲上げていないので記録は存在しないと回答した。しかし、橋脚工事で1日100トン余の汲上げ水を1か月に渡り川に排出している事実を住民が目撃し、工事関係者もそれを確認している。また、提供された地下水位測定記録は多くの疑問、矛盾点があり、的確な説明もない。他に、個々の家屋被害の資料提供を求めたが、存在しない・記録がない・プライバシーに抵触するなどで拒否された。不利な資料を隠していると疑わざるを得ない。
行政の対応等
名古屋高速環2号、並行する国道302号、民家ぎりぎりの共同溝立坑、雨水調整池の4つの大規模公共工事がほぼ同時期に隣接して実施され、明らかに被害発生の恐れがあり、事務処理要領に基づく調査をすべきであった。これは国土交通省の行政上の重大な瑕疵である。また、中日本高速の被害認定等の問題を愛知国道事務所に申し出たが「中日本高速に伝える」だけであった。本来は「事実関係を調査し、適切に指導し、結果を報告する」であるべきであり、行政機関の職員(国家公務員)としての自覚もなく責務を欠いている。住民要求への行政機関の姿勢は消極的(逃げ腰)であるが、一つ一つ事実確認をし、記録を残し、自ら知識を養い行動すれば必ず展望は開ける。(具体例:S宅、K宅、N宅)
今後の課題
地盤沈下、工事被害は起きないと説明したが、現に被害は生じている。事業者側はこの事実を謙虚に受け止め、原因を明らかにし、再犯させない責務がある。また、口頭説明だけでなく、地質、地下水位等の状況や被害を起こさせない工法等を説明・住民が理解できるようにすることが重要。
なお、2015年5月29日に衆議院国土交通員会で本村伸子議員(共産)が環2の家屋被害問題を取り上げ、国土交通大臣から「中日本はもとより、愛知国道事務所に対しても住民の方々の理解が得られるよう丁寧な説明をするよう指導してまいりたい」と答弁があり、相手方の姿勢を大きく変えるなど、私どもの運動に大きな弾みをもたらした。
懇親会
第2日目(11月13日)|全体会
労働会館東館2階ホール
開会あいさつ|大川浩正(現地実行委員長)
上岡直見著「鉄道は誰のものか」(緑風出版)p.155にこんな話が出ています。
- 年間130万人が利用する大井川鉄道は300万円の黒字を計上するのに四苦八苦。
- 市販価格670万円の燃料電池車(トヨタ)1台に対して223万円の公費注入。
- さらに水素スタンド1カ所に2億9000万円補助金。1時間あたり数台分、つまり田舎の小さなガソリンスタンド並みの能力。
どうしてこんなことが起こるのか。それは今の政治が献金によって動かされているからです。自民党への政治献金ランキングで、一般社団法人日本自動車工業会が1位、毎年6,000万円~8,000万円、2位がトヨタで毎年5,000万円程度です。この順位は、長らく変わりません。日本自動車工業会というのは、トヨタが主宰格です。つまり自民党への企業献金の1位と2位がトヨタ関係。自民党にとって、トヨタは最大のスポンサーなのです。
金権政治という言葉がありますが、今や日本では政権が丸ごと財界に買い占められているようなもの。民主主義国ではなくて金主主義国だと言うべきです。
さきごろ集団登校の列に車が突っ込む事故が続き、運転者が認知症ではないかとか、ポケモンGOが問題だとか言っています。しかし交通死亡事故の大部分は普通の事故で、そういう特別な事故ではありません。上岡先生は、各県の死亡事故数は車の登録台数に比例する。従って死亡事故を減らすには車を減らすしかないといっています。
さらにエネルギー問題、地球温暖化、人口高齢化、騒音、振動、廃車処理などどの面から見ても車抑制は急務です。しかし行政もマスコミもそれに触れようともしません。車業界の広告費は原発ムラの5倍に及ぶと言います。さらにゼネコンの道路つくれの圧力もあるに違いありません。
いま問題のTPPにしても農協より車業界の献金の方が多いという理由でゴリ押しされているのではないでしょうか。
パリ協定も発足しましたが、我が国がこんな金主主義から脱却して、まともな方向に進むよう我々の運動をいっそう強化して行こうではありませんか。
基調報告|旧来型公共事業からの転換を|橋本良仁(道路全国連事務局長)
(1)国際競争力強化とオリンピックを口実に予算増額
2017年度予算の概算要求・過去最高額。国土交通省の公共事業関係費6兆183億円(今年度の16%増)、効率的物流ネットワークの強化で三大都市圏環状道路整備など(今年度の25%増)。リニア新幹線に財政投融資3兆円。民主党政権下で休止・縮小していた大型公共事業はゾンビのごとく復活。
(2)新たな事業を行う余地はない
インフラの老朽化対策、維持管理費は2016年度3202億円、今後50年で必要な維持・管理・更新費は50兆円(年5兆円)。
(3)決めた計画は変更せず、さらに…
PI(パブリックインボルブメント)、PC(パブリックコメント)が導入され、環境アセスメントに計画段階評価も開始されたが、ほとんど機能していない。聞き置くだけ。
(4)道路住民運動と大気汚染公害被害者の闘い
沿道住民らは粘り強く闘っている。大気汚染公害被害者も喘息患者の医療費助成を求める署名を開始した。毎年6月の総行動デーで省庁交渉を行い、(1)B/C(費用便益比)の交通需要予測に平成17年ではなく平成22年を使用することを求めたが実行していない、(2)広島高裁判決確定後に、騒音の環境基準見直しを求めたが“個別の事例なので環境基準には反映できない”と平行線のまま。この2件は重要課題なので引き続き取り組む。2013年1月に公共事業改革市民会議http://stop-kyoujinka.jp/が発足した。ダム、道路、干潟、スーパー堤防、沖縄の米軍基地、リニア中央新幹線と闘っている市民・団体と共同している。
(5)旧来型公共事業からの転換を
旧来型公共事業で潤うのは経済界と建設業界だけ。古い経済界の救済プロジェクトにほかならない。持続可能な社会への転換が求められる。
講演(1)「微小粒子状物質PM2.5の研究と汚染状況」|山神真紀子氏(名古屋市環境科学調査センター)
PM2.5はParticulateMatter2.5のこと。
花粉20~30μmより小さく、SPMは10μm以下なので喉~気管支に入り、PM2.5は2.5μm以下なので気管支~肺胞に入り沈着する。
1次粒子(海塩、土壌、ばい煙、すす)のほかに、2次生成粒子(ガスが粒子化)があり、このガスを減少させることも重要。
1997年に米国で環境基準ができた(年平均15、日平均65はすぐ35μg/m3に変更)。日本も2009年に同じ値の環境基準を決めた。しかし米国はその後の長期暴露の死亡への影響などを追加し、2013年に環境基準を改定した(年平均15を12μg/m3と厳しくした)。日本ではまだ、そうした疫学調査はない。
2013年1月12日の中国で高濃度事例が大きく報道された。北京の半数の地点で中国の環境基準(日平均75、日本は35μg/m3)の10倍近い。しかし、日本への越境汚染はなかった。
2014年3月18日愛知県で初の注意喚起情報。この日の風向から中国の影響ではない。
2013年、2014年の高濃度9事例で越境汚染+地域汚染が5事例、他の2事例の越境汚染はシベリア森林火災と黄砂だった。
市のPM2.5年平均値は減ってきている。南区で平成27年度は初めて環境基準を達成した。
主要成分の経年変化から、EC(elementalcarbon)元素状炭素の減少傾向と似ている。これは自動車排ガス規制の効果と思われる。ただし、自動車排出量がゼロに」なっても0.2μg/m3は、野焼きなどの影響で残ってしまう。
2015年12月10日に国内汚染だけで高濃度となる事例があった。成分の海塩粒子は少ないので、越境汚染ではなく、有機炭素が多かったがその原因はわからない。
質疑
質問:PM2.5はアセス項目にできないのか?
回答:発生源の測定方法を検討中。多くの発生源の調査をするよう求めていくことが必要だろう。
質問:環境基準を見直すべきでは?
回答:米国並みに見直す必要があると考えている。幸い年平均15g/m3以下の地域も増えてきたので、そこで疫学調査を行い、日本としての結論を出せるのではないか。
特別報告「道路騒音と騒音環境基準」|足立修一弁護士(広島国道43号裁判担当)
1.日本における騒音公害訴訟:大阪空港(1971年~)、国道43号線(1972年~)、名古屋新幹線(1974~年)、いずれも騒音差し止めは認められなかったが、実質的には、夜間飛行禁止、車線削減、防音壁設置など請求内容が実現している。
2.道路騒音訴訟のリーディングケース:国道43号線訴訟では、差止めこそ認められなかったが、「瑕疵のある道路供与は違法。回避義務違反があった。」とし、等価騒音レベルLAeq65dB(沿道20mは60dB)で損害賠償を認めた(当時の環境基準は騒音レベル中央値L50)。
3.1998年騒音環境基準の変更:L50からLAeqに変更。対応する値に変更。「幹線交通を担う近接空間」の特例基準を追加した。
4.広島国道2号線訴訟:昼間LAeq65dBを超えると受忍限度を超える生活妨害が発生する、夜間LAeq40dBを超えると受忍限度を超える睡眠妨害としての生活妨害が発生する、として損害賠償を認めた。
5.圏央道あきる野・高尾山訴訟:2審の東京高裁で、事業認定において黙示の要件はない、土地収用法の要件のみ、騒音予測値は受忍限度内として、1審と逆の「事業認定は適法」とした。
6.日本の騒音の環境基準では、健康が守られない:WHO環境騒音ガイドライン(1999年)、欧州WHO夜間騒音ガイドライン(2009年)、欧州WHO環境騒音による疾病負担(2011年)と比べ、日本の裁判は、騒音を生活妨害の問題とみて、健康影響を無視している。(但し、厚木第4次爆音訴訟だけは「厚木飛行場周辺の騒音のレベルは…健康にも影響を及ぼし得る重要な利益の侵害である。」としている。)
なお、道路公害の大気訴訟(尼崎、名古屋南部)では健康被害を根拠に差止を認めている。騒音訴訟も健康影響を認めさせることが課題となっている。
講演(2)「欧州・日本の公共交通と市民参加 フランスにおけるLRTを活かしたまちづくり」南総一郎氏(京都大学経済学部)
LRT(Light Rail Transit)とは、人と環境にやさしい近代化された路面電車。低公害・温室効果ガス排出もすくない。建設費が地下鉄の1/10。バリアフリーに最適。街のイメージがよくなる。歩行者空間確保に最適。
かって大阪、京都、名古屋でも栄えた路面電車は廃止されて久しい。
オランダのアムステルダム、ドイツのフライブルク、スペインのビルバオ、サラゴサ、マドリッド、バルセロナでも導入が進む。
フランスでは28都市、730km(2015年)、年間約9億人の利用者(2013年)。最初はナント(1985年)、グルノーブル(1987年)は世界初のノンステップ、世界中のトラム・バスの低床化・バリアフリー化のきっかけとなった。
ストラスブール(1994年)の例。景観と融合、歩行者専用空間にLRTを走らせるトランジットモール、都心の自動車制御(都心は住民・業務・公共車以外は立入禁止。路上のゲートで閉鎖、開門カードが住民などに配られる)。パークアンドライドの充実(郊外部は乗車人員分の電車料金込みで350円/日、都心部は500円/時)。自転車専用レーン・駐輪場の整備。
1989年の選挙でトラム派の社会党トロットマン女史が市長就任。事前協議を5年間で500回開催。市長は「これはいい機会です。私たちの正しさを納得いくまで説明してください」と強い信念で職員を励まし、「環境にも福祉にも経済にもよいLRTなのだから、何度も話し合えば市民は納得してくれる」と職員も粘り強く協議した。毎回の大激論で最終的に反対派の8割が賛成に転じた。主な反対理由は「クルマを使うのに不便になるからイヤ」。
トゥール(2013年)の例。全長14.8km、29停留所、5か所のパークアンドライド、6~8分間隔運転。バスが主力だったが、バスレーン導入後も輸送力不足。南北2本にLRTとBRT(bus rapid transit)の幹線を敷設、ダニエル・デュラン氏のストライブ柄を多用したデザイン、バス路線網の再編でバスサービスを改善。LRTとバスが補完しあうことで、2014年には公共交通の利用者が4年前から18%増加した。
LRTのメリット:環境(省エネ、クリーン、車を減らす効果、景観整備)、福祉(路面から直接乗れる、バリアフリーにメリット、クルマを持たなくても便利な移動手段)、経済(地域経済の活性化、トランジットモールで来客増、雇用)。
LRTをつくるフランスの制度:交通法典2010
- すべての人の交通権を保証する。
- 交通政策は、公害や環境破壊を減らし、温室効果ガス削減に貢献しなければならない。
- 自動車利用を減らし、公共交通・徒歩・自転車を強化しなければならない。
人口10万人以上の都市圏ではPDU(都市圏交通計画)の策定が義務付けられ、交通法典で自動車交通の削減など11の目標が定められている。
コンセルタシオン(計画策定前の行政と住民の事前協議)を都市計画法典で義務化。
公的審査(環境法典が根拠)。土地収用事業とPDU(都市圏交通計画)の策定時に、行政裁判所が選定した第3者による公的審査委員が面談や記録で住民意見を聴取し勧告書を作成し市議会に提出する。市議会は公的審査の内容を尊重して議決し公益利用宣言を出す。必要なら市民は行政裁判所へ異議申し立てができる。
オーフス条約:環境分野の市民参加条約。リオ宣言(1992年)の第10原則を具体化。(1)環境情報へのアクセス権、(2)環境政策決定への参加権、(3)司法へのアクセス権(当事者に限定しない)。
フランスの交通財政は、独立採算制を放棄している。交通法典で交通権の保証と環境保護が最重要とされているため、赤字線でも残す必要がある。自動車利用削減の法的義務があるため、あえて公共交通を低廉な運賃としている。自治体が独自に課税できる交通負担金制度がある。
全国平均(2011年)で運賃収入は約30%(パリ、ストラスブールでも40%)と“実は赤字”。交通負担金が42%。この交通負担金(交通税)は、地域内事業所(従業員9名以上)に対して給与をベースに1.0~1.7%課税する。ちょうど日本の企業の通勤手当に相当する金額を従業員ではなく自治体に支払う。
日本で実現するには:交通政策基本法(2013年)が制定された。交通権の明文化こそないが、環境権と生活交通の確保を明記。地方自治体への権限移譲が不完全でも、自治体が独自で動けることも多い。交通条例制定(金沢市、高松市、長岡京市、福岡市、奈良県、熊本市など)。
課題1 財源:赤字でも街にメリットが多いので、税金投入価値があることを認識してもらう。地方自治体のLRT自主財源が必要。都市計画と連動してLRT導入を。
課題2 公共交通のネットワーク:欧米では共通運賃制などネットワークとして結合して成功。一体の公共交通としてクルマと競争しなければならない。近年のICカード化進展で独立採算のもとでの共通運賃実現を。
課題3 市民参加:欧米では市民参加がキー(フランス・説明会数百回、アメリカ・住民投票)。日本のNGOは地域鉄道存続で大きな役割(高岡、福井、和歌山)。環境NGO、福祉NGO、交通まちづくりNGOの連携。
まずは行政が様々な協議を試み、自らの能力を高めつつ、交通まちづくりNGO等と協働しながら市民の経験も高めていくプロセスが必要。快適な都市交通が実現する。クルマを使わないことで得られる街の魅力を知ってもらう(カーフリーデーのようなイベントで一旦クルマを止めて、本当にクルマが便利なのかを検討する価値はある)。
県外団体の報告(参加70名)
(1)美作岡山道路をめぐる状況|山田芳弘(高規格道路をみんなで考える会(美作岡山道路・美咲町飯岡地区))
山陽自動車道と中国自動車道を結ぶ36kmの地域高規格道路。岡山県内残り20km。
住民無視のルート決定(2013年6月突然公表)、11haの肥沃な農地消滅、遊水池の1/4が消滅、126戸の内29戸が移転対象。
ルート変更の要求(当初は4ルートあり、民家のない山側もあった)。住民の71%が署名。6割が戸別訪問拒否(弁護団に委任)。
2013年測量開始予定を4年間中断。今後、クラウドファンディング(メールで支援者を全国から募集)で得た支援金48万円で柵原ICの必要性のなさを住民に訴える。住民代表としての議員選挙も重視。
(2)東京外環道をめぐる状況
- 大塚康高(外環ネット)
都心から15km圏の環状高速道路、練馬区から埼玉県が開通。練馬区から世田谷16kmを3車線トンネル2本でつなぐ計画。1966年の都市計画決定当時は高架高速道路、その脇に幹線道路構造だったが、10万筆を超える署名などの反対運動で、1970年に建設大臣が凍結宣言。1999年石原知事が地下化を提唱し、2007年にトンネル式に計画変更。
交通センサスによれば、1999、2005、2010年と交通量は減少。計画当初の整備効果はすでにクリア。人口減少も進行し、交通量はさらに減少することは明らか。超高額な外環道建設費は、喫緊の政策課題に振り向けるべき。
2014年の都市計画事業認可と大深度法適用に対し、1,000人を超える行政不服審査法の異議申し立てている。
外環の2:外環道そのものは“地上部への影響を極力少なくする”目的で地下化したため、その脇の幹線道路も当然廃止すべきであった。それにも関わらず、都は、大泉~東八道路9kmを都市計画が残っているから推進するとして、すでに大泉1kmを事業化、その南3kmも事業化しようとしている。多くの立ち退き、道路公害が明らかで、外環道(地下トンネル)に加え地上部の幹線道路は過剰投資として、反対運動を進めている。裁判も行っている。
(3)東京の都市計画道路の問題
a.東京の道路事情|長谷川茂雄(区部都市計画道路問題連絡会)
半世紀前の計画に固執。東京ではこの10年間に1路線廃止のみ。大阪府では3割を廃止。2016年4月第4次事業化計画スタート(320区間226km)、「計画段階からの住民参加」「半世紀以上も前の計画は廃止を含めて検討」を求める要望書を3回提出。住民と議員の懇談会・毎年1回、参加議員17市区45名、参加住民38名。メーリングリスト開設。
次々と生まれる新しい住民の会(小金井市民の会など)
当面の目標:築地市場見直しの次は、小金井市の都市計画道路見直し、100件以上の反対意見が出た5路線は見直すなど
b.小金井3・4・1号線ほか|阿部達(都市計画道路を考える小金井市民の会)
“はけ・国分寺崖線”と“野川の自然”をこわす2本の都市道路を10年以内に事業化する計画が発表された。54年前は畑だったところで、ほとんどが新築。「道路計画はあるが30年もできてないから大丈夫ですよ」と市に言われて新築した人がほとんど。
東京都のパブコメでも半数を超える2,000通が見直し・中止を求めた。4,500名の署名で陳情、市議会は「見直しを求める意見書」を採択した。
2016年3月13日に会を結成し、勉強会、都議・市議への協力要請、署名活動を実施。都知事選で小池知事候補は「知事に就任させていただきましたら、実際に巡視し、小金井市、小金井市議会、地域住民の皆様とも対話し、優先整備路線に位置付けることが不適切だと判断される場合には、必要に応じ。見直しを進めていきたいと考えております。前知事が決めたからといって、そのまま踏襲するというような硬直的な考えは一切持っておりません。」と回答を寄せた。
(4)横浜圏央道の運動|比留間哲生( 横浜環状道路(圏央道)対策連絡協議会)
東京外環道の南西部8.9kmの盲腸路線、1995年4月都市計画決定。周辺土地は“高速道路”であることを隠し“都市計画道路”と表示して販売。それ以来反対運動。2005年3月、第1回事業評価委員会(都市計画決定後10年)で、(1)環境保全に万全を期すこと、(2)住民の理解を得るよう一層の努力をすること、の付帯意見付きで事業継続を認めた。しかし、大きな変化はない。
2014年から、強制収用の手続き、事業認定の公告縦覧では6,422通の反対意見書にも関わらず事業認可され、トンネル工事など本格的工事が始まっている。
事業認定申請の情報公開では、審議委員の発言は全て黒塗り。「成田闘争時において審議委員へ強圧犯罪事例に基づく法的措置」により不開示とされた。このような国民不在の土地収用法は問題が大きく打破が必要。
公害調停では、大気汚染をプルームパフモデルで行っているが、コンピューターのない時代における単純手法であり、原発でも実施している3次元流体モデルで行うべきである。我々が2004年に3次元流体モデルで予測したところ、NO2が環境基準を超えたので、再予測を求めた。事業者が対応しないため、2001年に公害紛争調停を申し立て、すでに5年、28回の調停を行っている。
(5)中部横断自動車道八ヶ岳南麓新ルート沿線住民の会|佐々木嵩
1987年6月、高規格道路の閣議決定。1997年2月、長坂~八千穂34kmの基本計画決定。2010年12月、関東地方小委員会で計画段階評価の試行を決定。2011年と2012年に2回のアンケート。
2012年11月に八ヶ岳南麓を横断するルートが発表された。
2013年1~2月国交省説明会。
2013年11月、沿線住民の会設立。2015年3月、国交省「対応方針」を決定。
計画段階評価の問題:民意無視。アンケート集計は恣意的。複数案の比較検討がない。新ルート案は従来の3km幅をはみ出し、国交省もミスを認めたが未だに訂正せず使用し続けている。手続きの透明性、客観性、合理性、公正性が確保されていない。
2014年11月に国交省に計画段階評価のやり直しを要求した。2015年11月の面談では国交省道路局担当者は「ボタンのかけ違いがあった。住民合意ができていない。」と発言。2016年3月、関東地方整備局担当者も認めた。2016年5月、国交大臣は「住民との合意形成が得られるかが課題」。10月には国交大臣政務官は「まだ完全には合意形成が行われていない」と発言。2016年8月に国交省等に「新ルートの見直しを中心とする話し合いの要請書」を提出、国交省は話し合いを正式に受諾した。
(6)中津コーポリバーサイド環境を守る会の運動|廣瀬平四郎
阪神高速道路公団(当時)は2000年から公団事業を進めていたが、2015年10月に設立された阪神高速道路(株)は、供用後45年以内に建設費を償還できないと判断し、淀川左岸線2期事業から撤退した。
しかし、大阪市は310億円の縮減が可能として合併施行方式(上下分離方式)建設することを2006年3月に議決した。
会は情報公開で得た資料等を国土問題研究会に調査検討を依頼し、その報告書を活用して、公害調停、大阪市との協議会を重ねて問題点を明らかにしてきた。
高速道路を淀川堤防内に建設することで、液状化の問題は大きく、淀川左岸線2期事業に関する技術検討委員会での審議は極めて不十分。しかも情報公開では委員発言は全てスミ塗りだったため、公開審査会への不服審査、裁判を通じて最高裁でついに2015年9月に実質全面勝利をした。
まとめ
閉会あいさつ|大川浩正(現地実行委員長):金主主義に反対して野党は協力という市民運動に加わりましょう
アピール提案|野々山淑子(東南部環状2号線問題懇談会)
次回開催地(千葉)への引継