東京外環道訴訟第5回口頭弁論における原告意見陳述(公益性・環境破壊について)|原告訴訟代理人 弁護士 遠藤憲一

2019年5月14日、東京外環道訴訟第5回口頭弁論が行われ、原告側から東京外環道の公益性及び環境破壊について意見陳述を行いました。その要旨を掲載します。

平成29年(行ウ)第572号

原告 岡田光生他

被告 国他

更新意見要旨

2019年5月14日

  • 原告訴訟代理人 弁護士 遠藤憲一

(裁判長交替に伴う更新意見)

1 第1点 今、本件外環道をつくらなければならない「公益上の必要性」はない。

被告国や事業者は、「首都圏の渋滞緩和、環境改善や円滑な交通ネットワークの実現」等の大義名分を掲げている。

しかし子供の人口は1950年に比べて半減した。我が国が著しい高齢化社会を迎えていることは公知の事実である。

こうした現実を無視して、平成11年とか平成17年度の道路交通センサスにしがみつき外環本線交通量1日7.6から9.6万台などと想定する事業計画におよそ公共性はない。

大泉ジャンクションから東名高速まで、60分を12分とする時間短縮効果があるというが、距離を速度で割っただけの計算でしかなく、いまや外環利用よりも都心環状経由や高速中央環状経由の方が早いという計算結果もある。外環道のために1兆6千億円、1メートル1億円も注ぎ込んで造る必要性も合理性もまったくない。

他方で国は、東日本大震災、福島原発事故から8年を経過するのにまともな震災復興さえできず深刻な放射能汚染の状態を隠蔽している。

社会福祉予算も削減の一途を辿る中、公益事業の名のもとに、住民のくらしの安全と環境を一方的に侵害して敢行されようとしているのが本件事業である。しょせんゼネコン、資本の利権に「公益」の衣を被しているにすぎない。

このように本件事業は、「公益上の必要」という大深度法16条3号の要件を欠くものである。

本件審理に於いては、「公益性」のひとことで無前提に受け入れるのではなく、その内実を徹底的に究明してもらいたい。

2 第2点 外環道は環境改善どころか環境の大破壊をもたらすものである

住宅の真下に直径16メートルのものトンネルが貫通する。武蔵野台地の地下水脈を分断・破壊し、排気ガスをまきちらし広く大気が汚染される。外環道は人間の生活に最も重要な空気、水、土、緑を汚染する。

巨大地下トンネルの建設は、一瞬先は闇の危険が埋まっている。現に地下トンネルによる、地盤陥没や、水涸れなどが全国各地で発生し、報告されている。

本件ではこれら環境破壊の問題 処分の違法性を基礎付ける事実(訴状請求原因第5)について徹底的に究明されなければならない。

地下水位の低下については、被告らも地下水の流動阻害が生ずることを認めている。

流動阻害によって水位の変動が生ずることを認めている。

しかし、その予測の手法=三次元浸透流解析なるものには、専門家から元になるデータの収集や手法上の問題点が暴露され、信頼性がないことが指摘されている。

また、その予測に基づく環境保全措置=地下水流動保全工法についても、環8井荻トンネルの失敗例に明らかなように、決して安定した保全措置ではない。

被告国は、実施事例は16例あるとしてその施行効果があるかのように言うが、環境影響評価書の該当部分を見ても事例の羅列でしかない。資料編には阪和自動車道の1例しかのせられていない(乙20の1)

被告国の外環事務所は 住民に対して検証結果は分からないと述べている。

しかも本件事業認可の後の検討委員会で、保全工法の構造変更の審議などがなされ、なお検討中の段階である。

にもかかわらず、環境影響評価に唯一依拠して危険はないと強弁しているのが被告国、事業者らである。

しかし、その環境影響評価書では肝腎な部分のデータが開示されていない。公式や数式、一般的数値は開示しているが、判断の下になったデータが不明なもの、論証抜きの評価が多数ある。

また、被告国は、原告らの主張に対し、認否を巧妙に避けている。

追って具体的に明らかにするが、主張を噛み合わせるには認否が必要である。都合の悪い部分に蓋をしたまま議論を進めることは許されない。

裁判所は、「環境影響評価書」にそう書いてあるからもうそれでよい、議論は終わりだといわんばかりの被告国の主張に引きずられてはならない、鵜呑みにしてはならない。

ことはどれひとつとっても住民の生命・身体にかかわる問題である。

最近 野川の気泡(酸欠空気)噴出が大問題となった。これついて国は事故ではなく「事象」であるなどと他人ごとのように言っている。単なる「原告の抽象的危惧感」だとなどと言っている。裏付け資料も出さずに「有意な影響を及ぼすものではない」などと言っている。

それでいて被告は説明責任を十分尽くしてきたなどと言っている。

このような被告らの対応は許されるものではない。

裁判所には、十分な事実解明のための訴訟指揮をされるよう強く求める

もとより本件行政処分が適法であることの立証責任は、被告らにすべてあることを裁判所は銘記して審理を進められるよう訴える。

以上