第43回全国交流集会アピール

第43回道路全国連全国交流集会は、「住民主体のまちづくりで、道路交通政策の見直しを」の大会スローガンのもと、千葉県市川市文化会館で開催され32団体、114人が参加した。

開催地市川市では環境問題をはじめ、多くの問題点をのこしたまま外環道路(東京外かく環状道路)の建設が進められ、既に一部の区間では供用が行われている。交流会1日目の現地見学では、こうした市川市の現状とともに、東京都江戸川区内のスーパー堤防事業、千葉県が第二湾岸道建設に固執している東京湾奥に残された最後の干潟、三番瀬、事業化に向け動きだした北千葉道路計画地、昨年11月に供用が開始された市川市都市計画道路3・4・18号線などを見学した。2日目の全体集会では、岩見良太郎・埼玉大学名誉教授による記念講演「住民主体のまちづくりへの課題」をうけ、全国各地区で道路問題に取り組む運動の紹介や成果、問題点などの報告がなされるとともに、大気汚染によるぜん息等の患者への医療費助成を求める運動、リニア中央新幹線建設阻止を求める運動から、集会参加者への訴えがあり、これらの運動との連携を深めた。

高速道路など巨大プロジェクト中心の公共事業は自然を破壊し、住民の住み慣れた街を奪い、大気汚染や騒音被害をもたらしてきた。しかもこうした巨大プロジェクトは莫大な予算を伴うため、公共事業の在り方を見直すべきだとの指摘は多い。しかし巨大プロジェクト、なかでも高速道路建設の動きは止まらない。1987年の四全総で計画された1万4000kmの高規格道路は既に1万1260km整備され、今後、計画路線すべてが整備対象となろうとしている。しかし高度経済成長期に造られた多くの社会資本は老朽化しており、今後50年間に必要な維持、管理、更新の費用は250兆円とされている。新たな巨大道路を建設する財政的余裕はない。

巨大公共事業は、関係する住民が知らないところで決められ、一度決まった計画が見直されることはまれである。計画段階で住民意見を取り入れることが目的で国が導入したはずの「計画段階評価」や、事業化された公共事業を見直す「事業再評価」などの制度は機能していない。

このような状況の中で全国の道路住民運動団体は国、自治体、道路会社などを相手に粘り強い交渉を継続し、さらには公害調停や訴訟を提起し、成果を獲得する団体も出てきている。こうした運動をさらに前に押し進めなければならない。

クルマの排気ガスによる大気汚染とぜん息の因果関係は、2011年5月に環境省が公表した大規模健康影響調査の結果からも明らかになっている。国は一刻も早くぜん息患者等の救済制度を創設すべきである。

騒音に関し、環境基準が幹線道路近傍地域の特例として設定している値は、国道43号線最高裁判決や国道2号線広島高裁判決が示した住民の受忍限度を上回る値であり、このような特例措置は直ちに廃止されるべきである。

福島原発事故の被害者は全国30カ所以上で裁判を起こし、原告数は1万人を超える。アスベスト被害者も国や事業者の責任と賠償を求め訴訟を行っている。私たちはこうした公害被害者とも連携し、共同の運動を進めていく。

安倍政権はこれまで数々の場で憲法をないがしろにする政策をとってきたが、いよいよ改憲に向け、大きく踏み出そうとしている。憲法は私たちの運動の最も重要なよりどころであり、平和憲法を守る幅広い運動によって、改憲への動きをストップさせなければならない。本集会の最後にあたり、私たちはこのことを強く訴える。

2017年11月12日

  • 第43回道路全国連全国交流集会参加者一同