国分寺都市計画道路3-2-8号線事業認可取消事件訴訟終結にあたっての声明

2015年6月6日

1 本件訴訟と不当判決

国分寺都市計画道路3・2・8号府中所沢線(本件道路)の建設事業について、建設予定地の地権者を含む住民ら22名は、2007年12月25日、国土交通省関東地方整備局長の行った認可(07年11月)は違法であるとして、その取消を求める訴訟を東京地方裁判所に提起した。この訴訟は、2011年3月29日の東京地裁判決、2012年10月31日の東京高裁判決、そして、本年4月14日の最高裁決定により、いずれも住民の取消請求を認めない不当な判断が出され、訴訟手続は終結することとなった。

2 私たちが訴え明らかにしてきた問題点

本件道路は、国分寺市内のほぼ中央、住宅密集地のなかを、多くの居住用建物や一部畑地などの緑地をも撤去して、幅36m、長さ2.5㎞にわたって貫く道路を建設しようとするものである。

私たちは、提起した訴訟を通じて、本件道路建設の必要性は、認めることはできないものであり、計画そのものが不合理で取り消されるべきものであることを訴え続けてきた。

本件道路は昭和18年に計画されたものである。道路予定地及び周辺では昭和40年前後から急速な住宅化が進められたが、他方で、今日では人口減少により交通需要が減少していくことが明確となっているなど事情は大きく変更している。にもかかわらず、戦前に立てられた計画をさらに拡張して、250世帯約800人もの立ち退かせ540億円もかけて建設しようとするのが本件道路建設計画である。本件道路が必要性のない無駄な公共事業であること明らかである。

しかも、本件道路が建設されることにより多数の住民の居住の権利が奪われ、コミュニティが分断されるのみならず、騒音や振動、大気汚染など道路公害を激化させ、周辺住民に多大な被害をもたらすものである。

ところが、この計画に関しては住民参加の機会も与えられず、住民の求める建設計画の見直しも検討されずに、一方的に決定され強行されようとしているのである。

本件道路建設には、このように重大な問題が存在することが明確になっているにもかからず、それらを無視し検討もせずして事業計画を決定し、さらには本件道路建設の事業を認可したのである。この事業認可が違法であり、取り消されるべきことは明白である。わたしたちは、これらの問題を訴訟手続を通じて訴え、様々な資料や証拠により事実を持って明らかにするとともに、地域の諸団体と共同でシンポジウムなどに取り組み、環境悪化や健康への重大な影響など広く市民にも問題提起してきた。

3 裁判所の不当な判断と今後の課題

ところが、裁判所は、行政の裁量を広く認め、東京都や国側の主張を鵜呑みにし、住民の指摘した重大な問題に目をつむり、不当にも住民の取消請求を退けた。しかも、事業認可時点で、人口減少のデータが公的に明らかにされていなかったとか、PM2.5について環境基準化されていなかったなどとして、これらを行政が検討しなかったことを正当化したのである。裁判所は、人権の砦であるべき司法の役割を果していないといわざるを得ないものであり、このような裁判所の姿勢は根本的にあらためられなければならないものである。

他方、私たちが指摘した様々な問題は、裁判所の判断に関わらず、本件道路建設がすすめられるなかで現実化しつつある。本件道路の延長が予定されている小平道路建設計画に対しても事業認可の取消を求める訴訟も取り組まれている。

 

私たちは、道路問題に対する各地の運動、環境を守るたたかいを進めている全国のみなさんとも連携し、本件道路建設による環境破壊を許さず、住みよいまちづくりをすすめるために、取り組みを進めていくものである。

  • 国分寺都市計画道路3・2・8号線事件訴訟団
  • 国分寺都市計画道路3・2・8号線事件弁護団