第28回全国交流集会 道路関係四公団民営化推進委員への申し入れ

政府の道路関係四公団民営化推進委員会は本年8月30日、これまでの審議結果を中間報告として首相に提出しました。

しかし、その内容は「必要性の乏しい道路を造らない」「国民が負う債務を出来る限り少なくする」、この2点を基本理念とすると明言しながら、(1)債務返済を50年間に延長し高速道路の残事業完成をわざわざ保障したこと、(2)そして、保有・債務返済機構(仮称「機構」と言う)なる新組織をつくり高速道路建設を民間経営・有料道路としながら、公共事業としての位置付けを明確化していること、(3)しかも「機構」に新規投資資金を与え、高速道路の残事業完成を二重に保障していること、など2点の基本理念を大きく逸脱する内容となっています。これでは「羊頭狗肉を売る」ものと言わざるをえません。

11月9~10日、京都市内で開催された第28回道路公害反対運動全国交流集会に参加した私たちは、既設幹線道路による、景観破壊、大気汚染や騒音による健康破壊、そして自然や住環境の破壊などの道路公害をなくすために、この「中間報告」を容認するわけにはいきません。

「国民が負う債務」は単に経済上の負担だけではありません。高速道路を中心とする沿道住民への道路公害もまた深刻な「債務」でもあります。

よって、私たちは、12月末に予定されている「最終報告」では、次の点を踏まえ、とりまとめるよう、強く申し入れます。

1 財政問題について

1)有料制による高速道路の建設は、そのほとんどが不採算路線となると予想されます。このため十分な調査をもとに、不採算路線は、直ちに建設を中止すべきです。

2)一般国道、自動車専用道路2,300km建設は道路特定財源をもととした建設道路であり、国が7割、地方自治体の3割負担は生活道路そのものの維持・修繕さえ圧迫し、地方財政を危機に陥れています。これも論議の俎上に乗せ、建設を中止して下さい。

3)阪神高速道路公団及び首都高速道路公団が管理している地域高規格道路は「準高規格幹線道路」と言われ、全国で6,000~8,000kmを新設する計画です。このため、議論の対象を単に道路公団管理関係だけでなく、地域高規格道路全般についても論議し、あと約6,000kmの建設費用約60兆円(試算)の投資計画を中止するよう論議して下さい。

2 道路政策について

1)騒音・排気ガスによる大気汚染による喘息、ガン等の疾病、交通事故、景観破壊など、いわゆる道路公害を無くする議論も是非深めて下さい。

2)国土面積のみならず可住面積の狭い日本、過密な都市構造をもつ日本に相応しい、本来の交通政策のあり方も論議され、公害の無い交通政策実現に向けて、論議を深めて下さい。

3)新設道路をストップし、現道の渋滞解消と安全対策にその費用を振り向ける道路政策の変更に向け討議して下さい。

4)少子化による適切な将来の予測人口による自動車台数予測をもとに道路政策を行なって下さい。

3 その他

1)国民固有の権利としての「交通権」は、有料道路制度によって著しく侵害されています。それは多額の利用料を払わなければ通行出来ないことと同時に、有料道路建設に投資されることにより生活道路に投資されず、渋滞解消や道路の安全性が確保されないためです。このようなことのないように論議し、国民の「交通権」を保障して下さい。

2)日本の幹線道路といわれる一般国道は約53,000㎞あります。これに、高規格幹線道路14,000㎞、更に地域高規格道路約7,000㎞、計21,000㎞の道路新設は、実にその約40%にあたる幹線道路の増設です。これは世界に類例のない暴挙です。直ちにこの全体計画を見
直して下さい。因みに、この計画を完成させるためには、あと115兆円もの浪費が見込まれています。

2002年11月10日

  • 道路関係四公団民営化推進委員あて
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