第30回全国交流集会アピール

第30回道路公害反対運動全国交流集会は「道路政策の転換を」というスローガンのもとに41団体、160名が参加し、千葉県市川市で開催された。

本年4月には圏央道あきる野の土地収用反対裁判で東京地裁は圏央道計画が住民に騒音と大気汚染による公害をもたらす恐れの高い道路計画であると断じ、「こうした瑕疵ある道路計画は違法であり、事業認定ならびに収用採決を取り消す」という画期的な判決を下した。国道43号線、西淀川、川崎、尼崎、名古屋、東京と続いてきた道路公害裁判は道路公害が住民に深刻な健康被害をもたらしている事実を明らかにし、道路管理者としての国、自治体、道路公団などの責任を断罪する判決が下っている。それにもかかわらず高速道路を中心とするクルマ優先、開発優先の大規模幹線道路建設は全国で進められている。あきる野判決はこうした国などの姿勢の違法性を厳しく指摘し、公害被害を未然にくい止めようとする司法の姿勢を示すものである。この意味であきる野判決は道路公害裁判の闘いの上に勝ち取った我々住民運動全体の勝利判決である。我々は今後この勝利判決を基礎に、あきる野裁判控訴審をはじめ、全国各地で展開されている公害道路阻止の闘いの勝利と東京大気汚染公害裁判の完全勝利をめざし、公害被害者の救済と道路公害・車公害の根絶を期するものである。

小泉内閣の進めてきた道路公団民営化は無駄で有害な高速道路を借金で造り続けるという従来の制度を改めることができなかったばかりか、高速道路を税金で建設するという道を開き、さらには破綻した公団の事業を地方自治体に押し付ける動きにさえなっている。政府が財政難を理由に福祉関係や医療の予算を減らすなか、また国民の7割が「これ以上高速道路は必要ない」と考えるようになっている今、このように高速道路建設の借金の付けを何重にも国民に負担させる政策は国民に到底受け入れられない。政府はこうした国民の意識に目を向けるべきである。

「一度始めたら止められない」と言われてきた公共事業もダムや埋め立てなどの分野では見直しが行われ、中止される事業も出てきている。この流れを道路事業の分野にも導かねばならない。戦後の経済復興を目的に作られた道路整備緊急措置法が経済大国となったとされる今もなお継続し、道路を造ることだけを目的とした税金や借金で高速道路を造れる制度を温存しているのは、ゼネコンを頂点とする土木産業と癒着した政治のゆがみを象徴するものである。地球温暖化やヒートアイランドの現象が年々進むなか、都市とその周辺の緑地や水辺を保全することは高速道路建設よりはるかに緊急性を有する。また迫り来る高齢化社会への対応こそが、多くの国民が望む緊急の課題である。

今日、都市再生、都心の渋滞緩和を理由に大都市周辺の環状方向の高速道路を建設しようとする動きが急である。しかしながらこうした道路の目的はネットワーク化により高速道路の機能を高め、クルマによる物流を盛んにすることにある。したがってこうした道路の建設は都市周辺交通のクルマへの依存性を一層強め、都心への自動車交通を増大させ渋滞を促進する。渋滞緩和のためには自動車交通の抑制こそが唯一の方策である。都心からクルマを締め出し、人間のまちを取り戻すとともに、安くて使いやすい公共交通を整備する努力が世界各地の都市で行われている。我が国においてもこうした施策への転換が急務である。

今や道路政策の転換は自然保護やまちづくりに取り組む住民運動、市民運動からも強く求められている。「道路は聖域」として行政の裁量にゆだねられている時代は終わった。道路についての情報は計画段階を含め、すべての段階で公開されるべきであり、道路そのものの必要性や環境への影響など道路計画がもたらすマイナスを含めた議論を通じ、道路計画に住民の意見が反映できる制度が必要である。我々はこうした制度の確立を国、自治体に対し強く求めるものである。

2004年10月10日

  • 第30回道路公害反対運動全国交流集会